引火性液体として危険物に指定されている燃料は、その設置に関して消防法や政令でさまざまな規制が課せられています。事故や災害を避け、燃料タンクを安全に設置し使用するためにはこうした法律や政令の理解が欠かせません。
この記事では、燃料タンクの設置に関する消防法や政令について詳しくご説明します。ぜひ参考にしてください。
燃料タンクの設置は消防法で規制されている
指定数量以上の燃料を貯蔵する燃料タンク設置は、危険物として消防法によるさまざまな規制が課せられます。
消防法による規制内容とは
燃料タンクの設置等については、主に消防法第10条で下記のように規制が定められています。
・指定数量以上の危険物の貯蔵、取り扱いは、貯蔵所、製造所、取扱所以外の場所で行ってはならない(消防法第10条の1)
・製造所、貯蔵所、取扱所における危険物の貯蔵や取扱は、政令で定める技術上の基準に従う(消防法第10条の3)
・製造所、貯蔵所、取扱所の位置、構造及び設備の技術上の基準は、政令でこれを定める(消防法第10条の4)
なお、例外として、所轄消防長または消防署長の承認を受けた指定数量以上の危険物を、10日以内の期間、仮に貯蔵・取り扱う場合はこの限りではありません。
また、燃料タンクの種類には、屋外タンク・屋内タンク・地下タンク・簡易タンク・移動タンクなどがありますが、それぞれについて危険物の規制に関する政令により、構造及び設備の技術上の基準が細かく定められています。
基準の詳細については政令を確認するようにしてください。
「危険物の規制に関する政令」(e-Gov法令検索)
タンク間の距離と危険物の表示/標識などについては後述します。
危険物を取り扱える人は?
消防法で定められた一定量を超える危険物を取り扱える人は、国家資格である「危険物取扱者」の資格保有者です。
消防法で定められた危険物は、その危険度によって第1類~第6類に分類されており、燃料(ガソリン、アルコール類、灯油、軽油、重油、動植物油類などの引火性液体)は第4類です。
危険物取扱者は、甲種・乙種・丙種の3つに分けられ、どの危険物を取り扱うことができるかは、危険物取扱者の種類によって変わります。
甲種
危険物取扱者の最上位で、第1類~第6類のすべての危険物を取り扱うことができるほか、一定条件を満たすと危険物保安監督者になることができます。
乙種
危険物第1類~第6類の中で、試験に合格した類の危険物のみを取り扱うことができるほか、一定条件を満たすと、合格した類に限り、危険物保安監督者になることができます。
丙種
取り扱える危険物は、ガソリン・灯油・重油・軽油・潤滑油・引火点130℃以上の第3石油類・第4石油類、動植物油類のみで、危険物保安監督者になることはできません。
一定量を超える危険物を扱う施設では、正しい知識を持った危険物取扱者の配置が義務付けられています。
消防法で定められた、油類の指定数量
危険物の指定数量とは、消防法第9条の4で「危険物についてその危険性を勘案して政令で定める数量」と定められている量のことで、危険物の種類ごとに変わります。
重油、灯油、軽油、ガソリンなどの油類も、第4類の危険物(引火性液体)としてその指定数量が下記のように決められています。
<代表的な油類の指定数量>
重油―2,000L
灯油、軽油―1,000L
ガソリン―200L
さらに、危険物の危険度を図る物差しとして、「指定数量の倍数」という数値が用いられることがあります。指定数量の倍数は、危険物の貯蔵量÷危険物の指定数量の計算で求められますので、参考にしてください。
燃料タンクの設置に関する注意点
燃料タンクの設置については、以下のような点に気を付ける必要があります。
タンク間の距離
施設におけるタンク間の距離は、その設置場所によってそれぞれ政令で定められています。
・屋外タンク
屋外タンクの区分、及び取り扱う危険物の引火点の区分に応じて定められた距離を保つこと。詳細は、危険物の規制に関する政令第11条を参照してください。
・屋内タンク
屋内タンクは平屋建の建築物に設けられたタンク専用室に設置し、タンクとタンク専用室の壁との間、及び同じ室内にタンクを2つ以上設置する場合のタンク間は、0.5メートル以上の間隔を保つこと。詳細は、危険物の規制に関する政令第12条を参照してください。
・地下タンク
地下タンクは、地盤面下に設けられたタンク室に設置し、タンクとタンク室の内側との間は、0.1メートル以上の間隔を保つこと。また、地下タンクを2つ以上隣接して設置する場合は、タンク間に1メートル(タンク容量の総和が指定数量の100倍以下のときは、0.5メートル)以上の間隔を保つこと。詳細は、危険物の規制に関する政令第13条を参照してください。
危険物の表示/標識など
危険物製造所、貯蔵所、取扱所(移動タンク貯蔵所を除く)では、見やすい場所に必要な標識や掲示板を設置しなければなりません。
具体的には、
1.「危険物製造所」「危険物地下タンク貯蔵所」「危険物給油取扱所」などの名称を記載した標識
2.下記に挙げる必要な事項を記載した掲示板
・危険物の類
・危険物の品名
・貯蔵(取扱い)最大数量
・指定数量の倍数
・危険物保安監督者名または職名
を掲げます。この2点は、いずれも長さ0.6m以上、幅0.3m以上の白色の板に、黒色の文字で表示します。
3.注意事項を表示する掲示板
第4類の危険物の注意事項は「火気厳禁」です。
この掲示板は、長さ0.6m以上、幅0.3m以上の赤色の板に、白色の文字で表示します。
以上3点の掲示が必須です。
その他、
・給油取扱所では、「給油中エンジン停止」の掲示板(長さ0.6m以上、幅0.3m以上の黄赤色の板に、黒色の文字)が必要です。
・移動タンク貯蔵所(タンクローリー)の場合には、1辺が0.3m以上0.4m以下の正方形の黒色の板に、黄色の文字で「危」と記載し、車両の前と後ろの見やすい箇所に掲げます。
などの点にも注意してください。
なお、これらの注意点については、地域によって具体的な内容が異なる可能性もあります。詳しくは管轄の消防署等に確認するようにしてください。
まとめ
燃料タンクの設置にあたっては、指定数量や取り扱える人の条件などのほか、タンク間の距離や標識、掲示板の設置といった点にも気を付けないといけません。具体的な内容は上記や政令等を参考に、よく確認しておきましょう。